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2つの意味をもつ「小さな政府」。これを区別して議論することが必要です。

text by

小泉龍司

2006.03.26

「大きな政府と小さな政府」という言葉があります。
それはどういう意味をもつのでしょうか。
そこには2つの意味があります。

  1. 第1に、「無駄が大きい政府」と「無駄が小さい政府」という意味があります。
    この点では「大きい政府」が良いと言う人は誰もいません。全ての国民は「小さな政府」を望んでいます。
    ただし、その税金の無駄使いの中から利益を受けている政治家や予算の縄張りを持つ中央省庁の一部、又、これに関連する既得権益を持つ人達は、この小さな政府作りに反対します。これは徹底的に排除しなければなりません。
    具体的には、無駄な公共事業の縮減、特殊法人の整理統合、国民の目には見えにくくチェックが甘くなる特別会計の縮減、そして、公務員給与を民間給与並みに引き下げることなどが必要です。徹底的な「官のリストラ」、改革が必要です。

  2. 第2に、「行政・福祉サービスが手厚く国民負担も大きい政府と、行政・福祉サービスの水準が低く国民負担の少ない政府」という意味があります。
    この意味における政府のあり方については皆さんの意見も分かれると思います。
    高福祉高負担のヨーロッパ型の社会を良いとするか、低福祉低負担のアメリカ型の社会を良いとするか、は難しい問題です。
    別の言い方をすれば、社会全体を皆で支え合うべきと考えるか、自分のことは自分で責任を持つ「自己責任」が大事と考えるか、という選択でもあります。
    福祉の水準を高く保つために税負担が重くなれば、(特に高額納税者の)勤労意欲が失われる恐れがあります。
    しかしながら、他方、行政・福祉サービスの水準が低いと治安が悪化したり、生活の安定が得られない低所得者の生活基盤が崩れ、ひいては、低所得者の勤労意欲が失われる恐れがあります。

  3. どう考えれば良いか大変難しい問題です。
    単に国民の多数決に委ねて良い問題であるのか、という点も良く考えてみる必要があると思います。
    ただ私が気をつけなければならないと考えているのは、この第2の意味での「小さな政府」が良いとする人は、いわゆる「勝ち組」と呼ばれる高額所得者や社会のエリート層に多いという点です。
    大きな所得を持っていれば老後の心配もなく、他方、税負担が軽い方が良いに決まっています。
    そして、実はこのグループの人達が世論を動かしていると見ることができます。
    学者、マスコミ、中央の経済界。
    国民全体からみると、実は一握りの人達が世論形成に大きな影響力を持っています。
    それに惑わされてはいけないと思います。

  4. 特に、第1の意味の「小さな政府」論は国民全体が賛成するため、第1と第2の意味における「小さな政府」が区別されずに混同されて議論されると、事柄の本質がわからなくなってしまいます。
    そうした意味で、「大きな政府から小さな政府へ」と単純なキャッチフレーズで政治を続けていくと、いつの間にか「勝ち組」の人達の論理に国民全体が乗っかってしまうことを私は恐れています。

  5. 私は第2の意味における政府のあり方については、明確な結論とその理由付けを得るには至ってはいませんが。
    しかし、少なくとも、2つの政府の意味をしっかり区別して考えること、「勝ち組」の世論形成に惑わされてはいけない、という点はしっかり心に留めて検討を深めていきたいと思っています。