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自民党 vs 民主党/都市 vs 地域社会

text by

小泉龍司

2006.04.01
  1. 従来、自民党は地主の農村地域を基盤とする政党として政治基盤を維持し、そのアンチテーゼとして、都市住民の利害を代弁する政党として民主党は勢力を伸ばしてきた。大きく見れば、こうした式が成り立っていたと考えられる。

  2. しかし、戦後の総理としては初めて都市部(横須賀)出身の小泉首相が登場し、都市住民の感性を身に付けた小泉首相の下、自民党はまず第一に都市の有権者をひきつけるプレゼンテーションを優先させる政党へと変化してきていると捉えることができる。
    小泉総理が「自民党をぶっ壊す」と叫ぶ時、その「自民党」とは「農村部(地方)」を基盤とする自民党である。
    確かに高度成長期以降、「国土の均衡ある発展」という国策の基本的考え方の下、都市住民が収めた税金が地方へ流れて行ったことは事実である。
    都市住民の不満が積り、自らの富を奪っていると感じる従来の自民党、そして「官」への潜在的憎しみに火をつけたことが、爆発的な小泉首相人気の大きな要因の一つであったと考えられる。

  3. 従来、そうした役割を担おうとしていたのは民主党である。県庁所在地のある各県の小選挙区第1区の議席を多数獲得し、「1区現象」と呼ばれる現象が生まれていたのもその現れであった。その民主党のお株を奪ったのが小泉自民党である。

  4. しかし一方、この逆転劇中で奇妙な現象も現れてきた。
    昨年の衆議院選挙では、九州、北海道、あるいは新潟といった日本列島の東京から遠い距離にある地域で大きな自民党離れが起こり、あれほどの風が吹いたにもかかわらず、自民党はこれらの地域で敗北を喫した。先に行われた長崎県の離島を中心とする県議選の補選でも民主党が勝ち、その流れは続いていることが明らかになった。

  5. また、政策面でも小泉総理が掲げる「構造改革というアメリカ型の政策」に対して民主党は、自民党との差別化を図るため、農家への直接支払い制度の導入など、ヨーロッパ型の政策を唱えはじめた。
    アメリカ型政策とは、「自己責任」に重きを置く政策であり、ヨーロッパ型政策とは、農業政策・社会保障政策など「社会の安定」にも重きを置く政策である。

  6. こうしてここ数年間に、自民党も民主党も、支持基盤と政策が共に入れ替わってしまったかのような様相を呈している。
    そして、もっと不思議なことは、両政党ともそのことを明確には認識していないということ、少なくとも明確な意図と意思決定に基づいて、双方のポジションの入れ替わりが行われたのではないということである。
    いつの間にか入れ替わった、あるいは入れ替わろうとしている、というのが実態に近い見方である。
    結果として、農村部にいる自民党議員や候補者と、逆に都市部にいる民主党議員や候補者が苦戦を強いられたのが、昨年の衆議院選挙であった。

  7. では、これから自民党と民主党、そして都市と農村部(地方)の関係はどうなっていくのであろうか。
    自民党の中にも民主党の中にも、それぞれ都市部出身の議員(候補者)と地方出身の議員(候補者)がいるから事は単純ではない。
    党首が都市部出身か地方出身かによっても変わってくる。
    民主党の前原前代表が「ミニ小泉」と言われるのも、キャラクターだけではなく、やはり前原代表も都市部(京都市)出身の議員であることが関係していると思われる。

  8. しかし、大局的に見れば次のように考えることができる。
    都市vs地方という利害対立に加えて、都市の中にも富裕層と貧困層、持てる者と持たざる者の利害対立が生まれてきている。
    いわゆる「格差」問題である。この格差を良しとする小泉首相の衆議院予算委員会の答弁があったが、都市富裕層出身の総理は、格差の実態を知らないのであろう。
    しかし、小泉総理がこの問題をどう認識しようがするまいが、都市と地方、そして富裕層と貧困層の間に生まれた「格差」は、今後10年の日本の政治に間違いなく極めて大きな影響を及ぼすことになると考えられる。
    それはこの格差問題の実情に、国民がいつ頃具体的な政治反応を示すのか、ということにかかわっている。
    私は、この格差問題を国民が投票行動に反映させ、政治の土俵を揺り動かす時期は、消費税の増税問題が具体的に浮上した時であると見ている。
    2つの問題、すなわち格差問題と増税問題が重なった時に、両二大政党がどのようなスタンスをとるのか、それはまだ明確ではない。
    しかし、その時に行われる衆議院総選挙時以降、日本の政治は単なるポピュリズム(大衆迎合)とその合言葉(キャッチフレーズ)だけでは済まされない、自民・民主両党をはじめ、各党、各政治家の真価が問われる時代に入っていく。

  9. 小沢民主党代表が登場した。
    地方(岩手)出身の新しい野党のリーダーが、この2つの問題にどのようなスタンスを示すことになるのか…。じっくりと拝見したいと思う。