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外資の買収攻勢にあまりも無防備な日本企業

text by

小泉龍司

2007.07.11

 『「三角合併の解禁(本年5月)」により、主要先進国の中で最も企業買収(M&A)がやりやすくなった国、日本-外資の買収攻勢にあまりも無防備な日本企業-』

(1)本年5月の商法改正

 本年5月、商法の改正により、いわゆる「三角合併」が解禁され、外資による買収攻勢が懸念されている。経団連も二年前に行われた「三角合併」解禁のための商法改正の際には、解禁は日本企業のグループ内の再編に有効であるとして法改正に賛成していたが、施行直前の今年になって外資の買収攻勢が心配になり、解禁条件の厳格化を自民党に求めたが、時すでに遅し、三角合併は既定方針どおり解禁された。

(2)企業買収・統合は二段階にわたって進められる。

 第一段階は、買収者(外資系ファンド等)による企業の株式の取得である。株式の公開買付け(TOB)などにより、買収者が50%以上の株式を取得すると、その企業経営権は完全に買収者側に移ることになる。次に第二段階では、こうして経営権を取得した企業を100パーセント子会社化する。50%以上の株式を持ち経営権を取得しても、少数株主が残っていては、その会社は完全には思いどおりにならない。そこで少数株主を追い出して、会社を完全に支配することが必要となる。しかし、少数株主を追い出す・・・と言っても、そんなことが法律上許されるのであろうか。

(3)少数株主を追い出す仕組み-株式交換制度

 ある意味では、今までの株主の財産権の侵害にも当たる、「少数株主の追い出し」を認める制度が商法に定められている。それが「株式交換」である。これは非常に強権的な制度であり、従って欧米ではごく例外的なケースしか認められていない。フランスやドイツでは、買収者が総株式の90~95%を取得した場合にのみ、残りの5~10パーセントの少数株主を排除するため、この「株式交換」の仕組みを発動することが認められる。大株主の権利の乱用を抑えるためである。これに対して日本では、株主総会(過半数以上の出席)で出席株主の3分の2以上の賛成(特別決議)があれば、発動することができる。また、アメリカでは、先に述べた買収の第一段階、経営権の取得が、現経営陣との合意なく行われる、「敵対的買収」であった場合には、その後、2年間は「株式交換」を発動することはできない。

 企業価値を高めるのではなく、買収された企業の転売や資産の売却などにより、自己利益の獲得だけを目的とする「乱用的買収者」を排除するためである。これに対して日本の商法では、そうした歯止めはかけられていない。もともと日本では、この「株式交換」という「少数株主を追い出す仕組み」の使い勝手が良く、買収者にとって有利な法制になっていた。

 それに加えて本年5月以降、買収者にとってさらに有利になる改正商法が施行されることになった。これがいわゆる「三角合併の解禁」である。

(4)「三角合併解禁」とは、「株式交換の対価」の範囲の拡大である。

 少数株主を強制的に追い出す=少数株主が保有する株式を強制的に買収者が買い取る=時には、当然「対価」が必要となる。

 その「対価」として、これまで認められていたものは、買収者(企業)の株式だけであった。少数株主はその企業から追い出されるが、その企業の100%親会社になる買収企業の株主になることによって、間接的にではあるが引き続きその企業にかかわることができる。しかし、今後はこの「対価」の範囲は拡大され、現金あるいは買収者の更に親会社の株式なども認められることになった。

 少数株主をより遠くに、(特に対価が現金である場合には、当該企業グループの外に)「排除してしまう」ことも可能になった。(マイノリティ・キャッシュ・アウト、と呼ばれる…現金を掴ませて、小数株主を退場させるという意味)

(5)米系投資ファンド「スティール・パートナーズ」−現実の脅威

 こうして日本は、企業買収の100%子会社化が、主要先進国中、最もやりやすい国になった。どうして、こうした商法改正が行われたのか?反対ないし慎重論はなかったのか?という点については、稿を改めて述べることとするが、いずれにせよ、こうした改正が行われた結果、今後外資による買収攻勢が一層、強まることが懸念されている。

 それが現実のものになったのが、米系投資ファンド「スティール・パートナーズ」による日本企業への敵対的な買収である。(次稿へ続く→