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米系ファンドによる敵対的買収と買収防衛策

text by

小泉龍司

2007.07.12

前稿からの続きです)

 企業の買収と統合は、二段階のステップを踏んで進められる。

  • 第一段階:買収者による企業の株式取得と経営権の奪取
  • 第二段階:買収に反対する少数株主の追い出しと100%子会社化

 この第二段階のステップが一昨年(2005年)の商法改正により、主要先進国の中で最もやりやすい国になったことは、前稿のとおりである。その結果、外資によるわが国企業への買収攻勢が強まることが懸念されていた。折りしも、米系投資ファンド、スティール・パートナーズが敵対的買収者として登場。ブルドッグソース社に対して、5月18日に株式の公開買い付けを開始し、その行方が注目されていた。

 ブルドッグソース社側は、スティール・パートナーズによる株式の公開買い付けは、最終的に企業価値を高めること(ひいては株主の利益を増加させること)を目的とするものではなく、株式の転売により利益を上げることを目的とする、投機的な買収であるとして、6月24日、株主総会において、他の一般株主の賛同を得て、買収防衛策を導入し、この発動の準備を進めていた。

 買収防衛策として導入された措置は、スティール・パートナーズを除く株主に新株予約権を無償で割り当てるというものである。(スティール・パートナーズに割り当てられる新株予約権は、会社側が23億円で買い取ることになる。)これが実現すれば、他の株主の保有株式数が(今回の場合)3倍に増加し、現在10.52パーセントの株式を保有するスティール・パートナーズの株式保有割合は、2.86%に落ち込むことになる。

 スティール・パートナーズ側は、この買収防衛策の発動差し止めを求め、東京地裁に仮処分申請を行い、6月24日にこれが棄却されると、東京高裁に抗告を行っていた。

 これに対し東京高裁は、7月9日、東京地裁の決定を支持し、スティール・パートナーズの抗告を棄却する決定を行った。スティール・パートナーズはなお最高裁に抗告できるが、ブルドッグソース社が予定していた昨日(7月11日)の防衛策の発動には、間に合わないこととなった。

 高裁決定のポイントは、スティール・パートナーズを「乱用的な買収者である」とした点にあり、わが国の企業防衛を行う上で、明確な指針を示した画期的な決定であると言える。その骨子は、次のとおりである。

  1. スティール・パートナーズは「投資ファンド」という組織の性格上、自らの利益のみを追求しようとしている存在であるといわざるを得ず、「乱用的買収者」と認めるのが相当である。
  2. 乱用的買収者は、株主として差別的な取扱を受けることがあってもやむを得ない。
  3. 買収防衛策は、合理的な事情がある場合は是認される。
  4. 今回のブルドッグソース社の新株予約権の無償割り当て(買収防衛策)は、その必要性を肯定でき、株主平等原則に違反する違法なものとはいえない。

 今回、東京高裁が「投資ファンドという性格上」スティール・パートナーズを「乱用的買収者」と位置づけたことは、経営方針を示さない外資系ファンドによる日本企業の買収を防止する上で、極めて大きな意味を持つものである。前稿で述べたとおり、行政(法務省)や立法府あるいは経済団体が外圧に負けて、非常に甘い判断を示す中、「乱用的買収者」の攻勢に対し、日本の企業は、司法(裁判所)の判断により救われることになったからである。