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参議院選挙−自民党惨敗の意味を考える−自民党は「風」に負けたのか?−

text by

小泉龍司

2007.07.30

 参議院選挙から一夜明け、政局は早くも「次」へ向けて動き始めた。「次」とは安倍総理の進退、8月の参議院議長選挙、9月の臨時国会、そして衆議院の早期解散や政界再編をにらんだ動きである。

 しかし、政治が「次」へ動きはじめる前に、今回の参議院選挙の結果が意味するものは何であるのか、よく見極めておかねばならない。

安倍総理の続投表明をなぜ、自民党は支持するのか?

 安倍総理は続投を表明し、多くの自民党幹部はそれを支持している。国民の審判が下ったにもかかわらず、総理が退陣しないことは、今後の自民党政治に大きなダメージを与えることになることが明白であるにもかかわらず、なぜ、安倍総理や自民党各派はこうした意思決定をするのだろうか?

 その理由は、安倍総理や中川幹事長の、昨夜来の言葉の中に見出すことができる。

 安倍総理「基本的な政策は国民に理解して頂いていると思う」。中川幹事長「2005年の郵政選挙で信任して頂いた、自民党政治の基本路線を国民が否定したわけではない。野党の側からも、今回の選挙でそうした路線問題の対立軸が提示されたわけではない」。

 つまり、自民党では、・・・安倍内閣は、郵政選挙で信認を得た小泉政治の基本政策を引き継いだ内閣であり、その基本政策は、依然否定されていない…たまたま「年金問題」で一時的に「逆風」を食らっただけであるから「民意は安倍総理に退陣を求めたわけではない」(中川幹事長)・・・と考えているのだ。

 しかも、これは開き直りではなくて、自民党の幹部が本気でそう考えているふしがある。

「国への信頼」を深く傷つけた年金問題

 私は年金問題が表面化した当初から、これは、国民の一時的な「不満」や「不安」といった次元にとどまる問題でなく、国民の国に対する、ひいてはその運営を担ってきた政府・与党に対する「信頼」を、国民の心の奥深いところで深く傷つける問題である、と感じていた。

 だからこそ、安倍総理が矢継ぎ早やに対応策を打ち出しても、国民はこうした具体的解決策に好意的に反応しなかったのだと思う。

 国民が真に求めているのは、現実的な解決策だけではなく、深く傷つけられた国への信頼を回復する道筋である。年金不信は一時的な国民の不満といった「風」では決してない。

 加えて、地方の一人区での自民党大敗は、アメリカ型経済を目指す小泉政治以降の市場主義的政策に対する明確な不信認である。

自民党は「風」に負けたのではない。

 自民党がこの点を見誤ると、この先、自民党の行く末には暗雲が立ちこめることになる。

 今回の参議院選挙が、自民党の単なる「大敗」ではなく、「歴史的な意味をもつ大敗」になるかどうかの分岐点はここにあると、私は感じている。

 結果が出た後の対処こそ、実は最も重要な「選挙戦」である。

 逆風だからそれが止むまでしのいでいこう、という安倍総理続投の論理こそ、今回の参議院選挙を、本当の意味で、自民党の「歴史的な敗北」にしてしまうのではないか。

 そのように感じられてならない。