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自民党が抱える大きなジレンマ

text by

小泉龍司

2007.08.07

 昨日(8月6日)の毎日新聞の世論調査の結果、安倍内閣の支持率は22%(不支持65%)、自民党の支持率は17%(民主党33%)にまで急落した。

 安倍総理の続投が最も大きな原因であると見られているが、私は、安倍総理の続投を国民が納得していないということに加えて、続投を認めてしまった(認めざるを得なかった)自民党に対する、国民の不信感もまた、大きな支持率低下の理由であると思う。

 自民党支持率は、安倍総理の支持率よりさらに低下していることに着目する必要がある。

 国民の目には、安倍総理続投の姿は、不明朗な事務所費の問題や失言にも関わらず、自ら責任を取って辞任しなかった(安倍総理がかばった)閣僚達の姿にダブって見えている。

 けじめや責任感が急速に失われてきた日本社会の風潮を、総理自らが身をもって示してしまったかのようだ。

 そしてこれは単に、内閣不支持率を上げただけにとどまらず、年金や政治とカネ、閣僚の不祥事により、安倍内閣に不支持を表明した人達の「不支持」を、不可逆的な(不支持が固定化し元に戻らない)ものにしてしまった可能性が大きいと私は感じている。

 個々の失策であれば、取り戻すチャンスはあろうが、そもそもの「感覚」や「視点」が国民のそれとズレてしまっていれば、致命傷になりかねない。

 もう一つの問題は、自民党が抱える大きなジレンマである。

 自民党は今後、「格差の解消」と「構造改革」(効率至上主義)という、二つの絶対に相容れない政策要請の間で、もがき苦しむのではないか。

 地方に配慮し格差解消を図ろうとすれば、「古い自民党に戻った」と言われるであろうし、構造改革続行といえば「弱者切捨て」と批判される。

 もし巧妙に、この相容れない二つの政策要請を、自民党が抱え込もうとするならば、主流派と非主流派がそれぞれいずれかの政策を掲げ、両者の間で、擬似・政権交代を行うという方法がある。

 しかし、現在の自民党は(1)「古い自民党をぶっ壊す」という形で、自分達(が選び従った小泉総理)が、一度かなり派手に格差是正のための配慮を否定してしまったため、なかなか容易にはそこには戻れないであろう。また(2)自民党内で執行部=清和会の力が強くなりすぎ、皆がそれになびく状況になってしまった結果、派閥間の擬似・政権交代は極めて難しい状況にある。ポスト安倍候補が躍り出てこないことが如実にそのことを物語っている。

 だとすれば、格差是正(公平)と市場主義(効率)の間で揺れ動く国民の意思の振り子は、自民党内に収まることなく、必然的に自民党外に出ていくことになる。

 振り子が自民党の外に振れた時、それはすなわち政権交代を意味する。

 長いスパンで見た時、これまで自民党が長期政権を維持してこられた理由は、二つある。

 一つは、野党の政策をいち早く自民党案の中に取り込んでしまう、というやり方である。1970年代から80年代に、旧社会党の環境政策を自民党が取り込んだことなどがその典型である。

 もう一つは、派閥がそれぞれ異なる政策スタンスをとり、一方の内閣が行き詰れば、他の派閥が取って代わって内閣を作るという、先に述べたやり方である。

 しかし今回は、民主党に政策を先取りされ(政治資金規正法改正問題、農家への直接支払制度、子育て支援、年金一元化)かつ党内に政権交代を仕掛けるエネルギーがない。

 安倍総理の続投により、こうした自民党が抱える大きなジレンマが国民の目にさらされることになった。

 国民は現時点で、民主党に政権担当能力があるとは必ずしも考えていないことが、各種世論調査で示されているが、自民党の大きなジレンマを目の当たりにした国民は、これから二大政党制を求めて、民主党を本格的に育て始めるのではないか。

 この夏の参院選敗北の後に安倍総理の続投が重なったことにより、「今回の参院選敗北は、自民党のミスによる敗北(オウンゴール)である」では済まされなくなる可能性がある。