文字サイズ: 小 中 大

グッドウィルの廃業−労働規制の緩和と格差の拡大−

text by

小泉龍司

2008.07.04

 人材派遣業の大手、グッドウィルが廃業を決めた。同社が派遣する労働者の数は、毎日7,000人。同社は、事業規模の拡大路線を取る中で、違法な二重派遣、派遣が禁止されている建設や港湾運送への派遣などを繰り返してきた。一方で、ほぼ同じ時に起こった、秋葉原通り魔事件の犯人が製造業の派遣労働者であったことも、事件後、多くの人の関心を引いている。

 個々の労働者(企業に雇用される側)は、企業に対してそもそも、非常に弱い立場に置かれている。その弱い立場の労働者を企業側の論理から守るために、戦後、様々な労働法制が導入され、労働者の「生存権」や「生活権」が守られてきた。

 その中で、労働者と企業の間に介在して、給与をピンハネする存在ともなり得る人材派遣業は原則として禁止されていた(例外として専門業のみについて認められていた)。しかしながら、経済が成熟し、企業のより大きな成長余力を生み出すことを目的として(企業の供給サイドを強くすることを目的として)、99年に、建設・製造業を除いて派遣が原則自由化され、さらに03年には製造業への派遣も解禁された。

 その結果、企業は正規社員を減らし、急速に派遣労働者が増加した。派遣労働者を含めた、正社員ではない非正規雇用者の数は、全雇用者の3分の1(33パーセント)に達し、その非正規雇用者のうちの77パーセントは、年収が200万円未満である。

 企業にとっては都合の良い仕組みである。必要な時に必要な人数の労働者を確保でき、給与も非常に低く抑えることができる。派遣会社は仲介料を得ることができる。しかしながら、労働者の側は、収入の低下と不安定な雇用に甘んじなければならない。加えて、既存の労働組合がカバーしておらず、むしろ逆に正社員と利害が相反する場合もあって、組織的に守ってくれるものは何もない。

 企業の利益追求→コストダウンのシワ寄せが最終的には、派遣労働者も含めた非正規雇用の労働者にふりかかっている。それが間違いなく、「ワーキングプア」を生み出す背景にもなっている。

 こうした雇用形態を全労働者の3分の1が甘受することを政府はいつまで容認するつもりなのか?まさに弱肉強食の社会、そのものではないか?経済強者にとっての「自由」のみが認められていく、この日本社会の方向性を決して許してはならない。労働者派遣法を改正し、人材派遣業を99年改正前に戻すことをまず早急に措置すべきである。

 (強者にとって)の「規制」緩和社会から、(弱者にとっての)「格差」緩和社会への政策転換が求められている。