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派遣切りを許すな

text by

小泉龍司

2008.12.13

 景気が急速に冷え込む中、まっ先に影響を受けるのは、経済的に弱い立場の方々である。その中でも特に、派遣労働者を、契約期間中であるにもかかわらず解雇する「派遣切り」が大きな問題になっている。
 かつての終身雇用制の下では、企業の赤字化が進んだ段階で正社員のリストラが行われたが、今回の景気後退局面では、企業はまだ黒字であるのに、黒字の減少を抑えるために、自動車などの製造業を中心に、3万人以上の派遣切りが始まっている。

 「派遣労働」は、そもそも企業にとってはコスト削減の手段であり、また派遣労働者は、多くの場合、組合を持たず、企業からすれば最も解雇しやすい弱い立場に置かれている。さらに、多くの製造業の派遣労働者は、寮生活をしており、解雇されれば直ちに住む場所を失う場合も多く、事態はなお深刻である。
 これまでの景気後退局面に比べ、今回は極めて速いスピードで雇用調整が進められているが、その背景には、労働者派遣法の規制緩和に伴う雇用構造の変化により、全雇用者の3分の1が非正規(正社員ではない)雇用になってしまったことが大きな要因として存在している。

 当初、多くのメーカーでは、賃金などについて最低賃金法などによる制約を課される「雇用契約」ではなく、いくらでも安く働かせることができる「請負い契約」の形をとりつつ、実際には作業の指示は、派遣先企業が行う「偽装請負い」が行われていた。
 この問題が批判に晒される中、労働者派遣法の改正が行われ、「製造業への派遣」「3年までの派遣」が認められたため、2006年からは、それまでとほとんど変わらない待遇のまま、「請負い」は「3年の長期派遣」に切り替えられていった。
 
 このため、来年2009年には、多くの労働者が派遣期限を迎えることとなる(2009年問題と言われる)。これらの労働者は熟練した技術を持ち、メーカーの生産ラインにおいて欠かせない存在となっている。
 しかしながら、こうした熟練工を法の抜け道を使って(数週間の期間工としての雇用契約を間に挟むことにより)さらにその先、正社員にせず、3年間の派遣労働へ更新しようとする動きがある。(3年を超える雇用の場合は、メーカーは派遣労働者に直接雇用を申し込む義務がある。)
 今回顕在化した「派遣切り」やこうした「脱法行為」を見れば明らかなとおり、そもそも弱い立場におかれている労働者は、労働規制の緩和により、法律が想定している以上に弱い立場へと、さらに追い詰められてゆく。人としての尊厳を守るためにも、決してこうした動きを許してはならない。

 労働者派遣法については、今後早急に、働く者の側に立ち、「生活できる給与と職場」という観点から抜本的に見直していく必要がある。
 同法の規制緩和が、不当な雇用と解雇を助長し「格差社会」もたらしたことは、今や誰の目にも明らかだからである。