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「天下り」と「渡り」の根絶に向けて-決して抜け道を許すな-

text by

小泉龍司

2009.02.10

(1)公務員制度改革法の中に、3年間の経過規定があることを根拠として、先般、特例で「渡り」を認めることができる旨の政令が閣議決定されたことに対し、与野党双方から批判が出ていたが、先週の予算委員会(2月3日)において、麻生総理は、一年以内にこれらを禁止する政令を定める、との発言を行った。
確かに、これは一定の前進である。

(2)しかしながら、「天下り」や「渡り」の禁止については、法令の規定だけでは解決できない、より深い問題が隠されている。先の予算委員会の質疑で明らかになったとおり、省庁OBが複数の天下り先(多くの場合、当該省庁所管の財団や社団などの公益法人)を渡り歩き、何年間も(何度も)多額の報酬や退職金を受け取ることについて、省庁側は、これを「斡旋」している事実を認めようとしないのだ。
 元水産庁長官の「渡り」の例に基づいて、省庁の斡旋を追及する野党に対して、農水省・官房長は、頑として、団体の側から人材が欲しいとの希望が寄せられたので、その情報を本人に伝えただけだ、という極めて苦しい不自然な答弁を繰り返した。
しかしながら、歴代の、同一幹部ポストに就いていたOBが、順番に整然と、玉突きのようにポストを渡っていくことを、すべて団体側の希望の結果である、と強弁しても、誰も納得しない。

(3)さらに問題なのは、こうした虚偽の官庁答弁を所管大臣が認めてしまっている、という点である。省庁側の論理によるならば、今でも「渡り」は行われていないということになってしまう。
 仮にこうした省庁側の姿勢を改めさせることができなければ、いくら法令で「天下り」や「渡り」を禁止しても、これは民間人になったOBと団体の間の(民間同士の)自由意思の結果であるとの言い逃れをして、「天下り・渡り」が堂々とまかり通ることになる。

(4)野党も委員会でこの点を追求した。
 OBが天下りポストの後任者として、後輩OBを連れてきて、その団体に紹介するという形で、実質的に「渡り」が行われる場合についても規制すべきでないか?・・・との質問に対し、麻生総理は「役所の官房長が絡むのが基本的に天下りや渡りであると思う。退職してすでに民間人になった方々に、『その就職紹介はいかがなものか』と言うのは難しい。退職者同士の人脈(を使った人事)に出身官庁は介入できない」との発言を行った。
 また、省庁の斡旋を経ないで就任した公益法人などの役員について、実態調査を行うべきである、と求めたにもかかわらず、麻生総理は難色を示した。

(5)先程の農水省の答弁と、この総理答弁を合わせるとどういうことになるか?
 今でも省庁側は、「渡り」について、あくまで受け身(情報提供しているだけ)であると強弁している。そしてより巧妙に、「あくまで退職して民間人になったOB同士の話である」と、いうふうに見せかければ、総理の答弁に基づく限り、これを規制できないことになってしまう。
 これ(総理と農水省の答弁)では、まるではじめから「抜け道を」用意して、ここに「抜け道がありますよ」と示しているようなものである。
 こうした形で、「抜け道」の余地を生むような、政治と行政の態度(答弁)は、決して許されるものではない。これでは、いつまで経っても、政治と行政への信頼は生まれてこない。信頼や信認は、すべからく、「透明牲」に裏付けられた手続きからしか生まれてこないからだ。そして、今最も「透明牲」に欠ける仕組みとして批判される「天下りと渡り」、それを完全に根絶しなければ、国民の心を一つにした日本再生への道は、決して開けてこないのだ。