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世界で最も孤独な日本の子どもたち

text by

小泉龍司

2009.03.30

(1)2007年に、ユニセフ(国連児童基金)が発表した先進24カ国(OECD)の子どもたちの「幸福度」に関する調査結果により、日本の子どもたち(対象年齢15歳)が世界先進国の子どもたちの中で、最も孤独である、という異様な実態が浮かび上がってきた。
 「自分は孤独であると感じるか」という質問に「はい」と答えた割合は、日本の子どもは29.8%で、24カ国中トップであった。ほぼ3人に1人の子どもたちが、自分は孤独だ、と感じていることになる。

(2)さらに問題だと思われるのは、この日本の子どもたちの孤独感が、他国の子どもたちに比べ、突出している、という点である。日本に次いで、孤独だと答えた割合が高かったのはアイスランドであったが、それでも10.3%、日本の子どもたちの約3分の1であった。他の国は、すべて1桁台であり、最も低い国はオランダで、2.9%であった。日本の10分の1の割合に過ぎない。

(3)日本の子どもたちに何が起こっているのだろうか?
 家庭環境や教育現場を通して、徹底的にその原因を究明していく必要がある。
 現時点で想定される理由として、少子化(1人っ子の)増加、親たちのワーク・ライフバランスの問題(共働きの増加と親が家庭で過ごす時間の減少)、そして、教育のあり方の問題などの要因を挙げることができる。
 パソコン・ゲーム先進国と言われる状況の背景には、1人でゲームに向かう、孤独な日本の子どもたちの姿がある。

(4)小学校の遠足の日、引率の先生は子ども達のお弁当を何人か分、用意していくという話を聞いたことがある。親が子どもの遠足の日を知らず、弁当を持ってこない子どもが必ず何人かいる、というのだ。
 教室で、「昨日の晩ごはんのおかずは、何でしたか?」と聞かれて、「おかず、って何ですか?」と聞き返す子どもがいる、話も聞いたことがある。
 毎晩、親は不在。晩ごはんは親の買い置いた菓子パンだけという生活の中で、その子は「おかず」という言葉を理解できなかったのだ。

(5)一概に親を責めるだけでは、問題は解決しない。
 「家庭の崩壊」の一因になっている、親の働き方、すなわち「雇用のあり方」の問題にも踏み込んでいく必要がある。共働きでなければ、家計を支えきれない賃金体系の問題。その背景にある非正規雇用の問題などにも、視野を広げて考えていく必要がある。
 経済・社会構造の変質と歪みが次世代を担う子どもたちの心に落としている大きな影…という視点から、これらの問題を捉えていくことが、今必要である。

(6)教育のあり方にも問題がある。
 孤独と答えた子どもの割合が最も低かったオランダは、子どもたちの「幸福度」でも第1位であった。
 そのオランダでは、60~70年代までは、一人の先生がクラス全員に対し同じ内容の授業を行っていた。しかし、不登校や学力格差などの問題が増加しはじめた70年代以降、 様々な教育方法の模索が行われ、小学校では、5~6人の小グループに分かれての「個別教育」(グループ学習)が行われるようになった。
 一律の教育ではなく、子どもたちの習熟度に応じて教え方や教材を変える。そして、子どもたちが話し合いながら、グループ共同学習を行っていく。その方法は、一朝一夕に確立されたものではないだろうし、今も、試行錯誤が続いているだろうが、ユニセフの調査結果を見る限り、確かに大きな実績をあげていると考えられる。日本も謙虚にそのやり方を学ぶべき時である。
 近年、日本の子どもたちの学力低下が問題となり、学習指導要領の改訂や授業時間の増加などの措置がとられてきているが、「学力」の基礎となる子どもたちの「心」にも光を当て、思い切った発想の転換に取り組むべき時が来ている。
 「学ぶ」べきは、まず我々大人ではないか。謙虚に、そして柔軟な思考をもって。