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消費税の議論の前に、まずゼロベースからの行政改革を― 自民党マニフェストの問題点 ―

text by

小泉龍司

2009.08.03

 自民党のマニフェストが発表された。その中の「税制抜本改革」の項目には、次のように書かれている。…「消費税を含む税制の抜本的改革について、平成21年度税制改正法附則による道筋に沿って、平成23年度までに必要な法制上の措置を講じ、経済状況の好転後遅滞なく実施する。これにより堅固で持続可能な中福祉・中負担の社会保障制度を構築する。」…

 これだけでは、何を言っているのか、非常にわかりづらい。実は伏線がある。政府は今年度の税制改正法・附則の中に、3年後の消費税導入に関する記述を盛り込んだのだ。消費税導入の時期については、経済状況の好転を待って、改めて別の法律で定めるという体裁が整えられてはいるが、税法上はすでに、消費税増税は既定の路線になってしまっているのだ。今回の自民党マニフェストは、この税法上の道筋に従って、消費税を導入します、ということを改めて宣言したのだ。まずこのことを皆様方にはっきりと、認識して頂きたい。

 さてここで、大きな疑問が湧く。なぜ?、日本経済が2桁台のマイナス成長(戦後最悪の不況)に突入したこの時期に、消費税に言及しなければならないのか?およそ理解に苦しむ。
 第1に、近い将来の増税に言及すれば、国民の心理は一層委縮し経済対策の効果は確実に減殺される。第2に、順番が違う。財政再建は、経済対策とともに我が国存続のために必須の課題である。
 それならばなぜ、早急に徹底した行政改革に取り組まないのか。
 天下りの温床となり、無駄な政府支出を作り出している公益法人改革が未だ十分に行われていないことは先に指摘したとおりである(08年9月18日「公益法人改革―省庁との癒着を断ち切るべし」)。天下りそのものの実効ある禁止もまだなされていない(09年2月10日「天下りと渡りの根絶に向けて」)。
 国会議員の歳費も未だ1円も削減されていない(09年4月16日「まっ先に国会議員歳費の削減を行い政治の覚悟を示せ」)。
 第3に、負担と受益のあり方について、国民に選択肢が示されていない。
 麻生総理は「中福祉・中負担」を実行するためには、消費税増税が不可避である、と言うが、国民はいつ「中福祉・中負担」を選択したのだろうか?
 その選択の機会は、国民には与えられていない。
 小泉構造改革の時代に、政府は明らかに「低福祉・低負担」に国民世論を誘導した。
 その結果、医療崩壊が起こり、介護スタッフの不足が起こり、雇用のセーフティネットが綻び、国民から大きな不安と批判が湧き起っていることは事実である。
 しかし、国民に対し、明示的かつ具体的に、受益と負担の関係が示されていないため、「中福祉」がどのレベルの福祉水準を意味するのか、国民には皆目わからない。

 以上3点の疑問点に、自民党はきちっと答えることができるのだろうか?
 これらの疑問点に対する明確な答を聞くまでは、多くの国民は決して消費税導入を認めることはない。
 重要な問題の内容をきちっと整理し、国民に選択肢をはっきりと提示し、国民の合意形成を進めていく力こそ、「政権担当能力」の本質である。今、自民党に求められているのは、消費税の議論ではない。
 今述べた意味での「政権担当能力」である。