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鳩山総理の施政方針演説について

text by

小泉龍司

2010.01.29

 (1)本日、鳩山総理大臣により、今国会開会にあたっての施政方針演説が行われました。
 大きなテーマとして、「いのちを、守りたい。」というフレーズが掲げられました。
「働くいのちを守りたい。」「世界のいのちを守りたい。」「地球のいのちを守りたい。」・・・
という形で演説が始まりました。
 今後審議が始まる来年度予算も「いのちを守る予算」と名付け、これを日本の新しいあり方への第一歩として提示したい旨が述べられました。
 その後50分間にわたり、国政全般にわたり所信が述べられましたが、客観的に見て理念が先行し、これから日本が克服しなければならない具体的な課題や目標が、明確に述べられていたとは必ずしも言えません。
 これまでの政治のやり方を変えて「いのちや人」を大切にする政治に転換するということはよく分かりますが、いよいよ政権交代後初めて本予算を組み、現実の国家運営を行うにあたって、まず国民に提示するべきは、我が国が置かれている現状についての深い洞察と明晰な分析であると思います。
 なぜ日本の経済は、この20年間成長できずに失速してきたのか?
 なぜ日本の財政赤字は、主要先進国の中で突出して深刻な状況に陥っているのか?
 なぜ一昨年のリーマンショックの後、日本だけがデフレに陥ったのか?
 なぜ日本は人口が減少していくことを止められないのか?

 (2)例えばこうした問題について、鳩山内閣としての現状分析を示さなければ、それに続く有効な解決策も示すことはできません。
 今日本が苦しいことは、日本人誰もが感じているし知っています。政治に求められることは、その本質的な原因を究明し、思い切った政策を迅速に打つことです。
 こうした点で、今後の成長戦略についての言及が、「医療・介護・健康産業の質的充実は、いのちを守る社会をつくる一方、新たな雇用も創造します。」「アジアを単なる製品の輸出先と捉えるのではありません。・・・例えば、スマートグリッドや大量輸送、高度情報通信システムを共有し、アジア地域全体で繁栄を分かち合います。」という程度の文言に留まってしまっていることには、物足りなさを強く感じます。
 また、デフレの問題についても「特にデフレの克服に向け、日本銀行と一体となって、より強力かつ総合的な経済政策を進めてまいります。」の一言で終わってしまったことも残念です。
 新政権も発足から4か月余りが過ぎ、いよいよ「国民の生活が第一」という政策を現実的な実効性を持って実施しなければならない段階に入りました。
 今年度の予算措置を説明する前に、日本の経済社会がどうすれば子供たちの時代まで生き残っていくことができるのか、その基本方針を国民は新政権に求めているのだと思います。

 (3)もう1点、外交についても最も肝心な問題について言及がありませんでした。
 かねてより鳩山総理は、日本・アメリカ・中国は「正三角形」の関係になるべきだ、と述べています。これが具体的にどういうことを意味するのか、という点は今後の日本の命運に関わる非常に重要な国策の基本問題です。国家の根幹に関わるといっても過言ではありません。
 演説では「日米同盟を21世紀にふさわしい形で深化させる。」(対米関係)、「日中間の戦略的互恵関係をより充実させてまいります。」(対中関係)と述べただけで、その二大国の間で日本がどのようなポジションに立つことを戦略的に選択していくのか、という肝心な点が全く提示されませんでした。
 政権が変わったことにより、日本の外交・安全保障政策は変わるのか、それとも変わらないのか、ということがこれでは国民には分かりません。

 (4)国の根幹は、経済・財政と外交・安全保障政策です。
 マニフェスト=民主党の政治だとは国民は考えていないと思います。
 個々に示されたマニフェストの項目を、これから実現していくにあたって、国の根幹に関わる経済、外交政策の基本戦略を示すことができた施政方針演説であった、とは残念ながら言えない・・・その印象が残りました。
 今後の各党代表質問や、予算委員会の審議で、議論が深められることを是非とも望みます。