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菅内閣が果たすべき使命――対立軸はいらない。必要なのは解決策――

text by

小泉龍司

2010.06.07

1.鳩山内閣は短命に終わった。
 なぜ短命に終わったのだろうか?
 その理由として、鳩山前総理の普天間問題における「迷走」や、また「政治とカネ」の問題について、説明責任が果たせなかったことなどが挙げられる。
 それはそれで正しい説明であろう。しかし、より深く掘り下げてみると、私は鳩山内閣、ひいては民主党政権のこれまでのスタンスに、その根本的原因があるのではないか、と考えるようになった。

2.民主党は戦後はじめて、2大政党制の下で本格的な政権交代を実現した。
 政権交代には大きなエネルギーが必要である。そして、政権交代はまさに権力闘争である以上、ある意味当然のことかもしれないが、そのエネルギーの大半は相手政党(政権与党)への攻撃に費やされてきた。
 民主党のマニフェストもそういう見方をすれば、対立政党(自民党)への攻撃に満ちている。高齢化の進展とともに、自民党が高齢者への配慮にシフトしていった「隙」を突いて、子ども手当てを正面に据え、自民党を揺さぶった小沢前幹事長の戦略の本質は、まさに「攻撃」である。(子どもを救いたいという純粋な思いに端を発したものであれば、保育園の整備、小児救急の充実、公的教育の充実など、本来打つべき施策をもっと真剣に検討したのではないか?)

3.普天間問題も、あえて自民党政権時代とは「違う道」を求めた結果の「迷走」であった、と捉えることもできる。(沖縄を救いたいという純粋な思いに端を発したものであれば、もっと真剣に代替地を探す努力を行ったのではないか。)
 民主党の基本的動作の底流は、このように自民党との「対立軸」と「攻撃」により構成されており、それは政権獲得後も変わってはいない。
 また、受けて立つ野党も野党であるが故に、より強く「対立軸」と「攻撃」の構図の上に立っていることは、言をまたない。

4.しかしこの状態は、沈み行く船の甲板で「紅白試合」を行っているようなものである。紅白両チームがそれぞれに、「自分の方が沈み行く船のことを心配している。」「自分の方がこの船の沈没を止められる。」と主張し言い争い、また相手を攻撃するための施策を打ち出したりしているうちに、船底に開いた大きな穴(デフレ、少子高齢化と人口減少、財政赤字、格差の拡大など)はどんどん大きくなり、船は次第に傾き沈みつつある。
 有権者の理解が得られるはずがない。
 だから、鳩山内閣は短命に終わったのだ。

5.政党がわざわざ対立軸を探し、わざわざ対立軸を作り上げて、そこに政党としてのエネルギーの源泉を求め、またそこでエネルギーを消費することを有権者は望んでいない。また、我が国はそれが許される状況でもない。

6.今必要なのは対立軸ではない。解決策である。
 全政党が知恵を出し合い協議して、最善の解決策を作り上げる。そのためのリーダーシップを、私は菅新政権に求めたい。
 与党であれ野党であれ、政党というある意味ではプライベートな存在が明らかに力を持ちすぎている。個々の政治家は、良心と危機感をそれなりに持ち合わせていると思うが、対立と権力闘争(攻撃)を求める「政党」に政治家が支配されてしまっている。
 国会において、無所属の立場から国会の営みを見ていると、そのことが非常に良く分かる。
 見識を持つ政治家が政党の制約を離れ、是々非々で根本的な国のあり方を議論できる場を作ること。政治家が党派を超えて危機意識を共有できる場を作ること。
 それを断固として実現することこそ、日本を救うために最も重要な道であり、菅政権が果たすべき使命であると考える。