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参議院選挙の結果が映し出した民意とは何か――政治は政局に流されずに日本の未来図を示す時――

text by

小泉龍司

2010.07.21

1.
(1)参議院選挙における民主党及び自民党の得票総数は次のとおりである。

(選挙区)(比例区)
民主党2275万6000票1845万0140票
自民党1949万6083票1407万1671票

(2)民主党の得票数は選挙区でも比例区でも自民党を上回るのに、獲得議席数は逆に自民党が民主党を上回ったのはなぜであろうか。
 それは3つの事情が重なったからである。

(イ) 地方の小さい県は1人区になっており、経済基盤が相対的に弱い地方圏では、菅総理の「消費税発言」が有権者の投票行動により大きな影響を及ぼしたと考えられる。この1人区で自民党は多くの議席を得た。
(ロ) 中規模の県は2人区になっており、ここでは民主党は2人の候補者を出した。この2人の得票数の合計は自民党候補を上回ったが、当選者は民主党一人、自民党1人となった。(民主党の得票数の多さが議席数に反映されなかった。)
(ハ) 大都市圏は3人~5人の複数区になっているが、人口の割に議席配分が少ないため、やはり民主党の得票数の多さが議席数に反映されにくかった。因みに、蓮舫議員は東京選挙区で170万票を獲得したが、一議席にしかならない。


 結局、人口の割に議席が多く配分されている1人区で、自民党が優位に立った状況を、上記に述べた事情により、他の選挙区や比例区でくつがえすことができなかったために、得票総数と獲得議席の「逆転」が起こることになったのである。


2.中長期的な趨勢を見る場合には、こうした選挙制度の「くせ」が作用した(衆議院については、また別の意味の選挙制度の「くせ」があるが)結果としての議席数だけではなく、生の得票数も見ておく必要がある。
 ここで指摘しておきたいのは次の点である。

(イ) 自民党の得票数が選挙区、比例区ともに2000万票を下回り、特に比例区の得票が過去最低水準の1400万票台に落ち込んだ(従って比例区の獲得議席も過去最低となった)ことには注目しておく必要がある。
比例区の票はみんなの党に流れたと考えられる。
(ロ) 他方、2000年以降の衆参の地方区、比例区を通じて(2005年の郵政選挙の時を除いて)2000万票以上を獲得してきた民主党は、今回選挙区ではこれを維持し、比例区では2000万票を下回る、という微妙な結果となった。
2000年代の10年間を通して2000万票をほぼ基礎票(衆議院の1小選挙区当り約6万6000票)として固めてきた民主党であるが、今回は選挙区ではそれを維持し、比例区ではみんなの党への流出を許したということである。


3.こうした形で、議席数や得票数については種々の分析は可能であるが、では全体として、有権者は今回の参議院選挙を通じてどういうメッセージを政治に送ったのであろうか。
 それは、「与野党でよく考え、話し合え」というメッセージである。
 結局、有権者は政権与党に完全な承認を与えず、また他方、前与党・自民党にも復活できる程の力を与えなかった。第3極は総じて不信であり、みんなの党も躍進はしたが、得票率が20%を超えた日本新党の時のような大ブームを引き起こしたわけではない。
 永田町の中の枠組みの中だけで見れば、どこかの政党が増えればどこかの政党が減るのだから、当然「勝った。負けた」になるし、当事者としての政党や政治家は完全にその感覚の中に埋没するが、一歩離れ、冷静に国民の視点から眺めれば、どう考えても誰(どの政党)も勝っていないことは明白である。


4.有権者は冷静である。
 なぜなら目の前でデフレが進み、生活保障(雇用や社会保障)が揺らぎ、少子化は止まらず、高齢化は進み、財政赤字は拡大する。
 永田町が「勝った。負けた」の政局騒ぎをやっている場合ではないと、多くの有権者は感じている。
 誰が政権を担うかに、有権者の本質的な関心はない。
 この苦境からどうやって脱出するのか、どこへ向かって脱出するのか、その具体的方策をこそ、国民は待っている。
 「よく考え、よく話し合え」――その確かなメッセージを受け止める理性と危機感が、政治の側にあるのか。
 全政治家の責任が問われている夏である。