文字サイズ: 小 中 大

ノーベル平和賞受賞者・ムハマド・ユヌス氏の講演会―ソーシャル・ビジネスという新しい希望―

text by

小泉龍司

2011.08.17

1.日本バングラデシュ議員連盟主催により、グラミン銀行創設者であるムハマド・ユヌス氏の講演会が開かれました。
 ユヌス氏は、1983年にグラミン銀行を創設し、貧しい人々へ無担保・無保証で少額融資を行う「マイクロクレジット」を展開、世界の貧困問題解消に尽力し、2006年度ノーベル平和賞を受賞されました。
 今回の講演では、「ソーシャルビジネスとは何か―東日本大震災被災者の自立復興支援のために―」をテーマとし、九州大学が主催する「グラミン・クリエイティブ・ラボ@九州大学」のプロジェクトについて、お話を伺うことができました。
 このプロジェクトの中心となって活躍されている九州大学の岡田昌治教授は、私が応援している「ふんばろう東日本支援プロジェクト」のミーティングで知り合った仲間です。

2.一般に貸倒れ率が高く損失が発生するおそれが大きいために、それまで銀行が見向きもしなかった貧しい人々による零細な事業に、なぜ少額とはいえ無担保無保証で融資を行うことが可能になったのか、という点が最も重要なポイントであり、質疑時間に入ってまず私がその理由をユヌス氏に質問しました。
 ユヌス氏は次のような点を説明してくれました。

貸出先の96%は女性が行う事業であるが、事業を行いたい人を中心に小さいグループ(5人)を作ってもらい、事業について話し合い、事業のチェックやアドバイスを受ける。
また、返済についても5人のグループがサポートする(本人が返済できない場合、他のメンバーが肩代わりする)。

貸出金利は年20%程度(単利)で、商業銀行の貸出金利とそう変わらない。

返済は少しずつ求めていく。かつ貸出の時も、元利払い受取の時も、銀行の職員が融資先まで出向く。職員は、融資先の家族構成や家族の名前も知っている。

こうした仕組みで貸付が行われるため、融資した資金が返済されてくる返済率は97~98%と高い(貸倒れ率は2~3%)。

3.(1)こうした、地域に密着し地域の人間関係を織り込んだ融資システムという新しいビジネスモデルを作ることができた、という点が最も重要なポイントであり、そのビジネスモデルによって元手を持たない零細な事業者への資金供給という大きな社会問題が解決されることになりました。
 ムハマド・ユヌス氏がノーベル平和賞を受賞されたのも、開発途上国における社会的問題の解決を通じて、多くの人々に真の希望を与えたからであると思います。

(2)ユヌス氏は2006年度のノーベル平和賞授賞式において「ソーシャルビジネス」(社会的企業)という新しいコンセプトを発表しました。
 これは、次の3つの要素を満たすものであるとされています。

社会的問題の解決に資する。
出資者には配当を行わず、利益は再投資または雇用者の給与引き上げに充てる。出資者に配当請求権はないが、経営に対する発言権や出資を引き上げて他に移転させる権利は有している。
NPO等とは異なり、公的な補助や委託費は受け取らず、純粋なビジネスとして事業の継続性を維持していく。

4.こうしたソーシャルビジネスの考え方に基づいて、東日本大震災の復興に資するプロジェクトを発見し育成することを目的として、ユヌス氏が来日されました。
 我々に講演をして下さった後の福岡でのフォーラムで、具体的な情報交換、検討が行われました。
 ユヌス氏は九州大学との連携の下、2009年から毎年1回来日されており、2015年までにあと4回、毎年7月に来日される予定とのことです。
 ご紹介下さった九州大学・岡田昌治教授と緊密に連携し、私もソーシャルビジネスという視野を持ちながら、具体的な復興支援に取り組んで行きたいと考えています。

写真1

写真2

写真3

写真4

写真5

写真6