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日本の社会をどう変えればいいのか(25)―デフレの原因は何か(2)(現役世代の所得の減少)―

text by

小泉龍司

2012.05.11

1.前回に述べたとおり、現役世代人口(及び総人口)の減少が、「需要不足」及び「需要不足」が今後とも超長期にわたって継続するとの見通しを生み、これが主因となってデフレが継続しているとの見方が次第に強まってきている。

2.加えて、「需要不足」は以下のような要因によって加速されている。

(1)現役世代の所得水準の低下(グローバリゼーションの影響)
 前回に述べたとおり、輸出関連企業は、新興国の安い労働コストの影響を直接に受けて非正規雇用を増やすことなどにより労働コストの削減を図り、また、貿易を行わないサービス業についても、こうしたグローバリゼーションの影響を間接的に受けているとの分析があることは、前回述べたとおりである。
 新興国との競争の中で、雇用者全体の所得に下方圧力がかかり続けており、現役世代、特に本来活発に消費する20~30代の若い世代がその影響をより強く受けていることも、「需要不足」の大きな要因になっていると考えられる。

(2)情報技術革新に伴う、単純労働と専門スキル労働の分化
 IT技術を駆使する金融や情報通信の分野では専門性が一層強まるとともに、他方では、これまでの専門的知識や技能がITにとって代わられた結果、マニュアル化された単純労働しか残らない分野も多く、労働の2極化が進んでいる。
 単純労働に対する報酬は当然低く、こうした労働(職業)の分化が中産階級の分化にもつながっている。
 こうした労働の質の変化も、若年層を中心に所得の低下、ひいては「需要不足」を生み出している。

(3)高齢者の不安と生活防衛
 若者だけではなく高齢者にも、現在の社会保障制度は将来も持続可能であろうか、との不安がある。
 なぜ不安があるのか。それは、社会保障制度からの負担と受益に世代間の不均衡があるからである。
 では、なぜ不均衡となるのか。
 それは、人口が減少していくからである。
現役世代の負担でその時代の高齢者を支えるという現在の「賦課方式」の年金制度(健康保険制度も同様)の下で人口減少が続けば、これからずっと自分が支えねばならない高齢者の数(負担)>(今度は自分が高齢化した時に)自分を支えてくれる現役世代の数(受益)という状況が続くことになる。
 ならば、これからの現役世代の人々は、損をするとわかっている社会保障制度を本当に規範意識だけで支え続けていくだろうか?という不安が、高齢者や高齢期が視野に入ってきた年代層の頭をよぎる。
 果たして人口減少が続く中で、日本の社会保障制度は持続可能なのかと疑問を持つ。その不安から、高齢者はさらに将来に備えて消費を抑えにかかる。ここにも、人口減少が「需要不足」を生み出すルートがある。

3.こうしたデフレの要因を整理すれば、次のような連鎖である。

この中で、①と②は現役世代人口の減少によりもたらされている要因であり、他方、③と④は主要先進国において中産階級没落の要因にもなっている問題である。
 こうした点から明らかなように、日本のデフレは
(1)循環的なものではなく構造的な要因に基づく。
(2)このうち海外要因と技術革新要因は、いずれの国でも中産階級の没落の要因ともなっており、そうした意味で、デフレと中流層の分解には一定の関連性(相互に原因となり結果となっている関係)があると考えられる。