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尖閣問題―長期戦を戦い抜く覚悟を―

text by

小泉龍司

2012.09.19

1.尖閣諸島が歴史上も国際法上も、我が国固有の領土であることは明白である。
 中国も(台湾も)1969~70年にかけて国連が行った海洋調査で、約80兆円と言われる大量の石油埋蔵量の可能性が指摘されるまでは、領有権の主張を行っていなかった。
 両国が領有権の主張を始めたのは1971年である。それ以前は、例えば1953年1月8日の人民日報「資料」欄では、尖閣諸島を中国呼称の「釣魚島」ではなく日本呼称で呼び、事実上日本領土であることを認めている。

2.ところが、1972年に事態が変化する。
 72年の日中共同声明で、田中角栄首相と周恩来首相がやり合った時、周首相が「尖閣問題を持ち出すと、双方言いたいことが沢山あって終わらないから、今回はやめましょう。」と言うと、田中首相は「それはそうだ。じゃあこれは別の機会に。」と応じたとの記録が日本側にある。このやり取りでは結局、「中国側にも言い分がある」ということを認めてしまったことになり、事実上ここから尖閣問題が始まっていく。
 その後、1992年には、中国は新たに領海法を定め、そこに尖閣諸島は中国の領土であると規定する。そして、中国の海軍力が増強されるに従って、実力行使を行うようになり、1978年には、約100隻の漁船が近海入り、うち40隻が領海侵犯を行った。その後の経緯を経て、2010年9月には漁船衝突事件が起こり、今年に入ってからは、香港活動家による不法上陸、漁業監視船、海洋監視船による頻繁な領海侵犯へと事態をエスカレートさせてきている。
 さらに、9月11日の政府による尖閣国有化後は、中国全土における反日デモが続き、日中間の緊張が高まっている。

3.まず現時点で、次の点を確認しておく必要がある。
(1)米国は、日本の「施政下にある」尖閣諸島は、日米安保条約の対象地域であることを明言している。
 日中が武力衝突に至った場合には、中国は米軍とも対峙することになるため、日米安保条約が有効である限り、軍事衝突を起こしてまで尖閣を奪取する選択肢は、事実上中国にはないと考えられる。

(2)とすれば、今、日本がなすべきことは、海上保安庁の巡視船の警備能力、補給能力を尖閣に集中し、何としても領海侵犯や不法上陸を阻止し続けることである。

(3)その状態が何年続こうとも、こちらから妥協することなく海上警備能力の向上を続け、「実効支配」を維持することである。
ただし、海上自衛隊を出動させることは、先に武力行使したのは日本だ、との口実を与え、中国海軍の介入を招くので得策ではない。

(4)中国海軍は、今後10年間に3度の空母の就航を予定しており、こうした中国の海軍力増強に対抗していくためには、どうしても日米同盟の深化=我が国の集団的自衛権の行使容認について、国内のコンセンサスを作っていくことが必要である。

(5)中国によるデモは、半官製的なものであるとの見方もある。もしこれが制御不能となれば、反日はいともたやすく反政府に転換する兆しがあり、中国政府にとって諸刃の剣的な側面がある。反日デモが無制限に拡大していくことは、中国政府にとっても大きなリスクがある。
また、海外投資家、外国企業から見た場合、中国の「カントリーリスク」が高まり、対中投資にマイナスの影響が出てくるおそれもある。

(6)なお、反日デモによる日系企業の損害については、中国政府に損害賠償を求めるべきことは当然である。

4.日本が実効支配を厳しく固めておけば、中国政府が取り得る選択肢は、実はさほど多くはないと考えられる。尖閣問題については、以上の点を客観的に踏まえて、冷静に長期戦を戦い抜く覚悟を全国民が持って臨むこと、まずそれが最も肝要である。