(1)①報道によれば、維新が閣外協力の方向に向けて最終調整を進めており、明日1021日(火)の首班指名選挙において、高市政権が発足する見通しとなりました。

公明党の連立離脱以降、政権の枠組みをめぐって各党が様々な動きを見せ、それに伴って状況も目まぐるしく変化してきたことは、皆様ご承知のとおりです。

②しかしながら、政権の枠組みの選択がどのような具体的政策の選択につながっていくのか?という点については、残念ながら、国民の目には明らかになりませんでした。

内閣総理大臣が指名され、新たな政権が樹立される憲政上最も重要なこの選挙に向かっていく過程において、それに関わる各政党は(与党の側も野党の側も)、明確なメッセージと国民へのアピールを欠いたままでした。

③対するマスコミ報道は、政党の組み合わせと確保できる議席数に関心を集中させてきました。

その結果、国民の関心もその方向に大きく傾き、政権選択によって実質的に何が選択されることになるのかが曖昧なまま、首班指名選挙を迎えようとしています。

 

(2)①このことに関連して、「週刊東洋経済 104日号」に掲載された飯尾潤氏(政策研究大学院大学教授)の論考が極めて鋭い指摘を行っています。

同氏は「何をやりたいのかわからない政権、政党、政治の在り方が、国民から愛想を尽かされているのではないか」。「本格的なアジェンダ設定の不在こそが、政権や自民党への国民の不信感を増幅したのではないか」と述べています。

そして、「このアジェンダ(注)設定とは、単にどの問題を取り上げるのかだけではなく、どのような視点から問題を把握して、どの方向で解決していくのか、という要素を含んでいなければならない」と指摘しています。

②国民民主党は 103万円の年収の壁問題の提起によって、アジェンダ設定権を与党から奪いました。

③また公明党が、連立離脱の理由として挙げた企業団体献金の規制強化。

維新の会からの(協力条件としての)議員定数削減案の提示も、アジェンダ設定権獲得のための動きです。

④これに対して自民党は、衆参両院で少数与党であることを言い訳にして、自民党オリジナルの的確なアジェンダ設定を行うことができずに、野党に押し込まれるまま今日に至っています。(以前の私の論考(10/5)で、先の衆参選挙の敗北は「政策敗北」であると述べたのも、まさにこの点を指摘したものです。)

⑤高市新総理誕生の暁には、自民党は何としても野党からアジェンダ設定権を奪還せねばなりません。

⑥私が提唱する、我が党のあるべきアジェンダの一つは、先の論考(10/13)のとおりです。

⑦大きな視野に立った、受け身ではない国政改革のアジェンダ。総裁選挙でも、政権の枠組みをめぐる動きの中でも十分に示されてこなかったアジェンダをどのように国民に提示できるのか?

そのことに高市新政権と自民党の命運がかかっていると強く感じます。

 

(注)アジェンダとは、元々はラテン語で「実行に移されるべき事柄」という意味であり、必ず実現すべき計画やプランのことを指す。